以前。水辺公園を散歩していた時のこと、
伐採されて残った桑の木らしい幹に若いキクラゲがついていた。
この日は、前日に雨が降ったせいで、
キクラゲは水を含んで開いていた。
それは赤子の耳たぶのように柔らかく、
ビニール袋に食べられそうなものを少し頂いてきた。
それを、お日様の下で干して、カラカラになったものを保存した。
中華料理に使うのである。
キクラゲは平地ではニワトコや柿、桑、カエデなどに発生し、
高い山ではブナやトチ、時にはモミなどにも発生するという。
私は町を散歩する時や山を歩く時など、
それらしい幹を見つけると自然と木肌に目を凝らす。
キクラゲはアラゲキクラゲとキクラゲがあるけれど、
毛のないキクラゲはどうやら高山の方のものみたいだ。
値段的にはキクラゲの方が上だという。
私がキクラゲに興味を持つようになったのは、
姉の嫁ぎ先の入口にあったアコウの木が始まりである。
その幹にびっしりと張り付いた不気味なキノコを見た父が、
それを私に採ってくるように言ったからだ。
私はお店に売っている乾物食品が、
卑近な庭木に張り付いているという事実に驚かされたものだった。
でも、それが食卓に上がり、
身体に異変をきたすことなく過ごせたことにひどく感動してしまった。
何より自分で採取した喜びは大きかった。
それ以来、どこを歩いていても伐採された広葉樹を素通りできなかくなった。
キクラゲ以外にも野生のキノコ類にも興味を持つようになった。
キノコの世界は分からないことばかりでとても面白い。
三つ子の魂、百までもということだろうか。
そんなわけで、スーパーでキクラゲを買ったことはあまりない。