春の野山には食べられる野草や木の芽があちこちに姿を現す。
知っているだけでも相当数あって、
それらは、昔から食用とともに薬としても利用されてきた。
漢方薬は今でも様々な野草から作られている。
野菜は「野の菜」と書くから、そうした野草から発展したのだろう。
それは人々の叡知によって長い時間をかけて研究され、
栽培しやすく、食べやすく、何より美味しいものになった。
そういう意味で野山の野草は野菜の原型とも言え、
アクの強いオリジンな味を確かめられる。
でも、一部の野草、主に薬草になるものは有害なものもある。
だから、野菜のようにたくさん食べることはできない。
少しなら薬になってもたくさんだとお腹に良くない。
野草摘みが好きな私は、今までに何度か失敗をしている。
先日、散歩をしていたらニワトコの新芽に目が行った。
この新芽も柔らかくて美味しいのだ。
以前、これを食べ過ぎてお腹を痛めたことがあった。
まるで天然の下剤だった。
でも、あれから年月も経ったし、無性に食べたくなってしまい、
掌に乗るくらい少しだけ新芽を摘んできた。
何しろ新芽は今しかないのだから。
早速ままごとのような量のニワトコをシェラカップで煮て、
佃煮みたいに仕上げた。
それを恐る恐る白いご飯に乗せて口に入れた。
すると、途端にほろ苦い春の味が口中に染み渡り、
何だか懐かしい味がした。
ほんの一口だけれど、
これこそ春の味だといわんばかりの強さがある。
木々の新芽は長い冬の間じっと春を待っていたのだから、
そのくらいの自己主張があるのは当然なのか。
さて、これからは本格的な山菜のシーズンがやってくる。