友達を近くの里山に案内した。
そこは300m程度の低山である。
岩も少なく決して危険な山道ではない。
それなのに緩やかな下りで小石でずるりと滑り、
左足が躓いて飛ぶように右に大きく倒れ、
足や手を打撲してしまった。
左は100mほどの急な土の斜面で、
途中につかまえられるような立木がほとんどない。
だから、左に落ちないために無理やり右側に倒れたのだ。
咄嗟に右手で体を支えたせいで、人差し指を強く打ってしまった。
左足の腿にも相当なあざが広がっていると思われた。
仲間が顔を打ったと思い心配したけれど、足も手も打撲の痛みで、
決して骨折の痛みではなかった。
しかし、もしも左の斜面に転げ落ちていたとしたら、
引っかかるものがないので奈落の底まで落ちて行ったと思う。
本能的なのか、反射的に身を守るため妙な形で飛ぶように倒れたのだ。
先ほどまで二人の友を見守りながら、
山で転んだらお終いよなどと言っていたのに。
世の中、何があるか分からない。
不覚にも本人があわや滑落という危険に見舞われたのだ。
もし、私がそこで落ちていたとしたら二人はどうしただろうか。
長いロープ無しではこの急斜面を下りることはできない。
里山だし、そんな用意はしていない。
携帯電話はつながる場所だったから、
きっとすぐに警察に連絡しただろう。
そして、デポしていたリュックを担ぎ急いで下山し、
寒空の下で救助を待ったに違いない。
車のキーは私が持っているのだ。
本当に左に落ちなくて良かった。
想像しただけでぞっとする。
これだけで済んで運が良かったとつくづく思う。