うねうねと細い曲線を細かく描いて続く、海辺の道を走っていたら、
どうしても海にもっと近づきたい衝動に駆られた。
車一台止めることのできるスペースを探して、
肩ほどの高さの堤防に設けられた狭い切り込み口に走った。
ここは内海なので波も穏やかで、
水も澄んでいて海底がよく見える。
四つほどある鉄の階段を降りると、海面に手が届いた。
久しぶりに触れる海の水だった。
潮が満ちていて海面に下りることが出来なかったけれど、
たくさんの貝が石畳のような海底に張り付いていた。
小さな牡蠣や亀の手、それに手で取ることのできるミナなどがある。
ミナは三角形をしていて食べるにはまだ小さすぎた。
それでも、私は反射的にミナを集めた。
袋に入れたミナは持ち帰って茹でてみた。
爪楊枝で刺しても中の身は取れず、
石の上に貝を置き、金づちで叩いて身を集めた。
これだって命あるものだ。
太古の昔はこうして食べたに違いない。
全くお腹の足しにならない微量なミナだったけれど、
サザエのようなほろ苦い味がそれなりにした。