所用のついでに時間が空いたので、
紅葉の綺麗な公園に寄り道してみた。
きっと今日あたりが見ごろだろう。
車を止めて通りを渡り、公園入り口の長い石段を上る。
私の前には普段着姿の女性が歩いていた。
その人は何も持たず手ぶらだった。
ハアハアと息を切らしながら最初の踊り場に着くと、
その女の人が立ち止まった。
歩いていたのは私たちだけだったから、
目が合ったので挨拶を交わした。
それから、お話しながら並んで歩くことになった。
その人は健康のために坂道を歩いていて、
ここにはそんな人が多くいてみんな知り合いだとか。
とても話好きで気さくな人だから、お喋りが楽しみなのだろう。
小さな山のようになった広い公園には、
入り組んだ道があちこちにある。
紅葉を見に来たと言うと、脇道を教えてくれ、
撮影ポイントに案内してくれた。
何と親切な人なのだろうと私は頭を下げた。
その女性はとても気さくな人だったけれど、
帰り道で家族の自慢話が続いたのが残念だった。
私は知らない人に対しても親しい友人とでも、
内輪の話はなるべくしないようにしていて、
それが他人との関係の守るべき礼節だと思っていたのだ。
だから、夕日に映える緋色の紅葉は美しかったけれど、
少し淋しい気がした。
人は他人の幸せぷりをこれでもかと聞かされると、
いい気持ちがしない。
それとも、心の狭い私がただ僻(ひが)んだだけのことなのか?
その人と別れ、ハンドルを握りながらちょっと考えてしまった。