静かな里山をひとりで縦走してきた。
コースは標高400メートルほどの低山の尾根道で、
下山すると30分ほどの場所にバス停がある。
このバスに乗れば帰りは楽勝だ。
でも、バスの時間は調べていなかった。
いつもなら一つ目のピークで戻ってきて、
約2時間半ほどの行程で済む。
今日は久しぶりにその先まで行って、
縦走することにした。
何しろこう暑くては家にいても家事も滞り、
頭も働かず、山を歩いた方がリラックスできる。
夏の里山は暑いと思われがちだけれど、
森に囲まれた山道はむしろ涼しくて心地よい。
カンカン照りの尾根だって、
家でじっとしているよりも快適だ。
道中はGPSで現在地が分かる登山アプリと、
以前の記憶を頼りに進んだ。
日が長いから遅くなっても構わない。
バスがなかったら歩いて戻るつもりだ。
アップダウンをいくつかこなして、
最後のピークは避けて標識にあった近道を通った。
近道はピークを踏むのと比べると、
トラバースして進み、道は平たんだし、
時間は3分の一に短縮される。
でも、かつての私は常にピークを踏んで歩いていたので、
この道は記憶になく、少し不安だった。
暗い杉林の中の歩きやすい道を進み、
少し明るくなったところで道が3つほどに分かれる地点に着いた。
登山アプリには「迷いやすい」というユーザーのコメントがあった。
アプリはこんなことまでできるのである。
光の差す右へ行くと少し藪漕ぎになり、
足元にはワラビが残っていた。
なぜかあまり使われていないような東屋もあった。
アプリには存在しないからメインではないみたいだ。
食べられそうなワラビを嬉々として探し、しばらく小休止。
雑草の中に踏み跡が見えたので、
ここからもどこかへ下山できそうだった。
でも、本来のバス停に降りるために三叉路に戻った。
知らない道や自信のない道は避けるべきだ。
歩き出してから4時間後、
見覚えのあるお寺に着き、冷たい沢水で顔を浸して、
バス停までの30分を歩く。
山道と違い住宅のある車道は疲れの感じ方が違う。
バスは平日は3本だけで1時間前に行った後だった。
おかげで万歩計の数は22200歩。
山の歩数としては上出来だった。