夏の盛りに家族になったヒヨコたち、
最初の体重測定ではたったの30gと掌に隠れてしまうほど小さかった。
鳴き声もヒヨコ独特のピヨピヨでとても愛らしく、
掌に乗せて可愛がったりしていた。
ところが、その旺盛な食欲で日に日に大きくなって、
今では見るからに重たそうな体をしている。
顔は恐竜のルーツを彷彿とさせていてとても恐い。
3か月ほどで赤ちゃん声の「ピヨピヨ」も、
いつの間にかすっかり大人に近い「コッ、コ、コッ、コ」になっている。
その体を両手で捕まえようとするとさっと交わしてしまう。
もう可愛らしいヒヨコではないのだ。
今までは暗くなると段ボールハウスに入って寝ていたのだが、
そこが手狭になるとベランダに置いていた木箱の上に寝るようになり、
そして、今は物干し竿の上まで飛んで3羽かたまって寝るようになった。
まだ小屋を作っていないので、
布を集めてカーテンにして下の地面に飛び出さないようにしている。
でも、そこからは隙間に外界が大きく広がっていて、
飛び降りて逃げようと思えばいつでもできる。
今のところ逃げようとする気配は感じられない。
彼らは冬の時期は日が短いので、
4時半頃になるとソワソワとしだしてベランダ中を走り回る。
なぜ眠る前にあんなに落ち着きがなくなるのか不思議だった。
そこで、しばらくそっと観察してみたら、
彼らが眠る定位置に着くまで30分ほど動き回っていることが分かった。
このことは以前、日が沈む頃に見た空を舞う鳥たちのことが思いだされた。
何百羽という鳥が群れを成して湖の上空を飛んでいた。
彼らの寝床は湖を取り囲む暗い森だ。
その森の木々の中に消えていくまで、
まるで自分の寝床を悟られないように、
何度も何度も鳥たちはあちこちの森に入ってはまた飛び回った。
結局、かなりの時間をかけて空から鳥はいなくなったのだが、
彼らがどの森の木々に去ったかは分からなかった。
とても衝撃的な鳥の行動だったので、
私はこのことをよく思い出していた。
もしかしたら、わが家のコッコ3羽も、
同じように外敵の目をかく乱させようとしているのか。
寝るということが鳥たちにとっては最も危険な状態なのだろう。
だとしたら、たとえ孵化工場で電気の力で生を受けた彼らにも、
野生の本能がかなり残っているに違いない。
それをずっと観察できるのは、
毎日の餌作りに追われるけれど、とても楽しい。