いつもの仲間と長い尾根を歩いた。
自宅から電車をつなぎ、バスに小一時間揺られて、
奥地の終着バス停へ着いた。
明日は尾根を越えて別の町に下るので、荷物は重い。
この仲間はいつも荷は重いに決まっている。
何しろ家や寝具を背負って長い山道を歩くからだ。
だから、それぞれが飲み物や肴やお酒を大きなザックに入れている。
今回は私は食料担当ではないので、自分の分の缶ビールだけだ。
仲間に申し訳ないが彼女たちは猛者で私の倍は担げる。
登山口のしょっぱなは急峻な道だった。
左側が土の坂になっていてところどころに杉の木があるだけで、
つかまえられる雑木が一本も生えていない。
枯葉でズルっと滑ったら下の谷底まで転げ落ちるだろう。
高所恐怖症の私はドキドキしながら坂を登った。
20分ほどやり過ごせば歩きやすい道になる。
それを希望に転ばないことだけに集中して足を運ぶ。
針葉樹が終わり、穏やかな広葉樹の尾根に着くと、
そこが私たちの宴の場所になる。
設営すると明日の縦走のため早々と食事作りが始まる。
今夜のメニューは混ぜご飯と豚汁だ。
混ぜご飯はアルファ米で作り、豚汁はカボチャ、人参、大根、ネギ、
その他の手作り乾燥野菜と味噌漬けにした豚肉。
お酒のつまみはそれぞれに持ってきた生ハムやチーズ、
フライドチキンやかまぼこなど盛りだくさんある。
野営の食事は色々と工夫が必要で、回を重ねるごとに上手くなっていく。
バーナーに火が入ると、
温かい湯気が天幕の中に満ち、
乾杯のビールが至福の時を知らせる。
明日は雪もあるとの予報だけれど、
今夜の星はどうだろうか。
森の真夜中の空は野営の大きな楽しみである。