仲間が二人やってきたので、
夕食はいつものように持ち寄り宴会にした。
宴会といっても翌日の朝は遠出して登山の予定で早く起きるし、
二人ともお酒は一口ぐらいしか飲まないから質素な宴だ。
でも、一人はちらし寿司の入った漆の重箱を、
風呂敷に包んで持ってきて、
それを聞いたもう一人はカップに入った、
茶碗蒸しを買って持ってきてくれた。
私もちらし寿司なら茶碗蒸しだと思い、
朝一番で準備していた。
友達の茶碗蒸しはわが家の保存総菜に頂いておこう。
茶碗蒸しの友はお肉やお魚は食べないので、
鶏のお肉を出しにとれない。
そこで、シイタケと銀杏、ホウレンソウ、
頭を捻ってお肉代わりに高野豆腐の入った茶碗蒸しを作ろうと思った。
茶碗蒸しといえば幼年時代を過ごした町に、
昔ながらの下足番のいる老舗があって、
何かの度にそこで茶碗蒸しとちらし寿司を食べたものだ。
昔は出前も日常的にあって、
来客があったりすると頼んでいたものだ。
そういえば、その店は今もどうやら昔と変わらず、
下足番も健在のようだ。
去年の夏に帰省した折、繁華街の一角にある店に、
数十人の若い人だかりの列ができていて、
とても賑わっていたのだった。
おかげで食べ損ねたけれど、
ずっと人気店であるのが嬉しかった。
そんなことを思いながら、
肉無し茶碗蒸しを蒸らす私だった。