友人ふたりを山に案内した。
数日前に関東平野に雪が降り、すぐに解けたが、
山は半分ほど登ったら岩の間には雪が残っていた。
ここは有名な山で、百名山ということもあって、
山道はハイカーで溢れかえるほどの賑やかさだった。
私たちは念のため軽アイゼンを持ってきていたけれど、
半分ほどの人たちは用意していなかった。
まさか雪があるとは思っていなかったのかもしれないけれど、
リアルタイムの情報は今はスマフォで知ることができる。
それなのに、多くのハイカーが足元は軽装だった。
それほどここは簡単な山と思われているのだ。
でも、雪があるとなると山は全然違う。
コースタイムは2時間半ほどだが、
アイゼンがあっても用心して歩くから歩が遅くなる。
アイゼンなしの人たちはひどく苦労している。
ハイカーの中には保育園に通っているような小さな子も多く、
運動靴で圧雪の道を登っていた。
子供連れならケーブルカーを使った方が安全なのに、
なぜか励ましながら歩かせている。
外国人の割合も3割ほどあり、
観光がてらという雰囲気が多いが、
中には調べてきたのかちゃんと雪山装備をしている人もいた。
ワンちゃんを胸に抱いて下って来る人も目立ち、
大抵がアイゼンなしの靴でこちらが心配になる。
彼らと私たちとの次元が大きく違って、
「ここは、どこ?」みたいな感じでひどく不思議な気分になった。
山頂直下になると夏道でも渋滞する山なのに、
軽装の人たちのために牛歩のように歩かなければならず、
なかなか進めなかった。
でも、キャーキャーと楽しそうな満艦飾の声が絶えまず響き、
まるでお祭り騒ぎのような賑やかさだった。