先日、水辺公園の森を歩いていた時、
気味の悪いキノコに出会った。
それはちょうど赤い色の筆のような形をしていた。
筆の先端にはドロリとした黒い汁のようなものがついている。
キノコらしい傘もないから、形状から見るとスッポンダケの一種のようだ。
その先端の墨汁のようなものはおそらくキノコの胞子だと思う。
花でいえば花粉みたいなものである。
このところの天候不順で菌が育って一斉に土から顔を出したのだろう。
白い丸い卵のようなものが土に出ていて、そこから茎を出すようだ。
キノコを見ると食べられるかどうかすぐ考えてしまう私だけれど、
それはいかにも気味が悪く、折ってみて茎を調べる気にはなれなかった。
写真を何枚か撮って、帰宅してから調べてみた。
キノコの本は数冊持っている。
それに特徴があるキノコだから簡単に分かるだろう。
そう思ってページを開くと、
これと似たようなキノコは数種出てくるのだけれど、
本によって名前が違うから困った。
食用キノコなどは地方でも呼び名が違って同定するのは難しい。
このキノコは見た目が特徴的だし、
「キツネの絵筆」、「キツネの蝋燭」のどちらかに違いなかった。
もちろんこんな形態だしたいていの本では食毒不明となっているけれど、
昭和43年発行の『きのこ図鑑』によると食用とはっきり書いてある。
この古い本はたいていの野生キノコが食用と書かれている。
こんなふうにキノコの研究はまだ発展途上らしく、
食毒が書き換えられることもよくある。
こんなに単細胞?な菌類なのに悩ましい。
キノコの写真集を見ていたら、
キノコに魅せられて菌類の研究者となり、
野山を歩いてその写真を撮り集めていた昔の友人を思い出した。
その友人が私をキノコ観察会によく誘ってくれた。
私が自然と向き合うようになったきっかけになった友だ。
おかげでその後はずっと、
私も野山を観察しながら歩くのを続けている。