水辺公園を散歩していたら、
大きな灰色をしたキノコが落ち葉堆積場にニョキニョキと出ていた。
これは何度か以前に採取して食べたことのあるハラタケの一種だ。
香りはないけど味は油で炒めたら美味しかった。
収穫すれば手提げ一杯になるかもしれない。
ハラタケといえばマッシュルームの仲間で、
堆積した落ち葉によく見られ、山中より公園や庭などに多い。
卑近な場所に出ているので、これを採って持ち帰る人は余り見たことがない。
今年の秋は雨ばかりで、山のキノコは顔を出しても育たない感じがする。
そんな中、公園の木の下に生えたハラタケモドキは、
ケミカルなものや人工的なものが一切ない貴重な天然キノコである。
誰も見向きもしないのは、
生える場所と何となく毒キノコっぽい風采に問題がある。
食べられると知っている私でさえ、もう今は採る気がしない。
キノコは文章や写真で調べても同定が難しい。
間違って毒キノコを食べたら、大変な苦痛が襲ってくる。
タマゴテングタケやドクツルタケなどの猛毒キノコは、
コレラ症状の挙句に死に至る場合もある。
他の毒キノコも地獄の苦しみを伴う。
それらは香りも良くてとても美味しいらしいから、
無毒と有毒を見極めるには多くの犠牲があったに違いない。
そう思うと、昔の人は偉い。
飢饉が来て何も食べ物がなかったら気味の悪いこうしたキノコや、
ありとあらゆるものに手を出さざるを得なかったのだろう。
技術の粋を集めてついに遺伝子操作の野菜が売り出されると聞いた。
私たちはこれからどこへ向かっていくのだろう。
本当の意味で純粋無垢な野生のキノコを見ながらそんなことを思った。