今日は朝から風もなく良い天気だった。
アイゼンをつけてスパッツをし、
名残を惜しむように緩やかな雪道を下る。
斜面側の空の上には雪をかぶった峰が眩しいほどに光っている。
初日には見えなかった白い稜線だ。
雪面が光の粒で瞬いている。
光の粒は宙を舞い、ダイヤモンドダストのように煌めいている。
まことにこれが銀世界だと心で呟く。
一歩一歩、歩くことで景色が一層心にしみる。
歩くって素晴らしい。
日帰りの登山者が次々と登って来て、山の情報を聞かれたりする。
私たちは、その中の人に「よほど楽しかったのですね」と言われた。
確かに仲間の全員が笑いを絶やさず、実にいい顔をしているではないか。
そういえば集まった時からずっとみんな笑っている。
人は自分の好きなことをしている時に、いちばんいい表情をするのだと思う。
スキー場でウエアを着替え装備を外し、
そこから乗り合いタクシーに乗って山とお別れをした。
楽しい三日間はあっという間に終わってしまった。
駅で電車を待つ間、仲間が駅前のコンビニにビールを買いに行った。
まだ昼を過ぎたばかりなのに。
でも、「雪山登頂記念を祝わなければ」と強く言われ、
私もカップに一杯頂いて乾杯した。
さて、みんなとは同じ電車に乗る。
車内では大きな声で話をしてはいけない。
さあ、襟を正そうか。