70キロほど車で走って見晴らし高原へ行ってきた。
毎年タイヤをわざわざ雪道用に替えるのはそこへ行くためだ。
年に一度だけのことだけれど、雪の坂道を走るのは恐いから。
今年は我が家のある地方には粉雪一つ舞い降りなかった。
1月はひどく寒かったけれど晴天続きで、それは西高東低のせいであり、
雪は日本海側や北の方に多く降ったのだった。
そんな気候でも雪道体験のできるのがこの高原だ。
年に一度は雪道を運転しなくては。
でも、残念ながら全く雪が残っていなかった。
3年続きでスタッドレスが全く要らない冬だったことになる。
高原の入り口の駐車場には例年3月中旬までは雪が残っていて、
車を降りた途端にアイゼンを着けて坂道を歩かなければならないほどだ。
でも、今年はまるで初夏のような山道だった。
一時間もかからず見晴らし高原に着いたが、風はとても強かった。
風向きを考えながら倒れないように風防を立て、
ご飯にカニの吸い物を混ぜてお昼にした。
高原には冬木立が風にあおられ、音を立てながら揺れていた。
その光景を写真に撮っていると、10年近く前、
遠くに住む友人をここへ案内した時のことを懐かしく思い出した。
冬の初めのことだった。
あの時は高原にたどり着くまでの時間に雲行きが突然変わり、
見る間に辺りが雪化粧をしたのだった。
木々に張り付いた白い雪が美しく、一面銀世界の高原になった。
まるで空から思いがけなくプレゼントを貰ったような気がした。
ここの景色は雪がよく似合う。
その同じ場所に自分がいることが不思議な感じがする。
時間とは何だろうとふと思った。
過ぎ去った時間とは何だろう。
そういう問いが風の音とともに頭を巡る。
そうだ、家に帰ったらあの時、友人が撮ってくれた写真を探そう。