先日、友人を誘って小さな山に出かけた。
その山はわが家から20キロほどのところにあって、
小粒ながらアップダウンの山で景色も素晴らしい。
初めての彼女をセオリー通りに急な坂を上り、
一番高い300メートルほどの頂きを目指した。
反対のコースもあるけれど、この方が視界が開けて楽しみが多い。
歩き始めたのがお昼前ととても遅かったので、
最初のピークでランチタイムになった。
穏やかな太陽のもと、遠くに見える雪の山が青空に映えている。
倒木に腰掛け、ランチを広げる。
というより、彼女が作ってきてくれたおむすびを置くだけ。
私は彼女のおむすびを頂くのは初めてだったので、その大きさに驚いた。
手で握るには目いっぱい大きなおむすびだった。
私が作るおむすびはその半分ほどだ。
彼女はそれが子供の頃からのおむすびの大きさだと言う。
考えてみるとおむすびとは代々継承されていくものだ。
何でもそうだけれど、特に食べ物は子供の頃のものが一番しっくりいく。
彼女が不安そうに、「美味しいかな、大丈夫かな」と、
私の顔を覗き込んだ。
大きなおむすびの中身はいり卵の味付けたものだった。
少しごま油の味のする卵だった。
これを彼女の子供たちは喜んで食べるので、
いつか私にも味わってもらいたかったと言う。
「とても、美味しい」と言うと、彼女はホッとした顔になった。
人が掌で一生懸命握ってくれたおむすびが美味しくないことがあろうか。
おむすびには心が込められている。
それは、決してコンビニでは味わうことのない優しさという心の味だ。