夏の終わりに無事に孵化したメダカは9匹ほどだった。
私の過保護?で産卵の度に母メダカを産室瓶に移動させ、
卵を放した後、また水槽に戻したり、
それを毎日何日も繰り返したせいか、
母メダカは水槽から姿を消してしまった。
その代わりに新しい命が生まれたというわけで、
毎朝、小さな針先のような赤ちゃんメダカを見ては心が踊った。
虫眼鏡を使わないと何匹いるのか数えられないのである。
そうこうするうちに赤ちゃんメダカは、
ひと月ほど経つと少し見つけやすくなり、
大人用水槽に入れることができるほど大きく育つのを楽しみにしていた。
ところが、先日、子供メダカを入れている丸瓶をいつものように確かめると、
何と姿わ探し出せないのである。
ただグニャグニャと黒い生き物が1匹確認されただけだった。
そのグニャグニャは多分ボウフラではなかろうか。
スイスイと泳ぐ姿を見ては安堵していたのに、
安心しすぎて水替えをしなかったから、
ボウフラが生まれるほど水質が悪くなったのだ。
私は焦って水槽の水を白い発泡スチロールの箱に少しずつ移してみた。
白いので見つけやすくなり、
何やらメダカの姿をした形骸が底に沈んでいるのが1匹だけ確認できた。
針のようだった可愛いメダカ達は水藻と化したようだ。
母メダカもいなくなったというのに、
彼女が残した子孫も消え果たのかと思うと残念でならなかった。
ボウフラを取り出し、じっと水の中を見つめていると、
一匹だけスイスイと泳ぐメダカがいた。
このメダカは強かったのか生き残っていたのだ。
今はその1匹の姿を祈るような気持ちで
虫眼鏡で必死になって探すのが、
私の朝のルーティンになっている。
大きすぎる発泡スチロールはメダカにとっては湖ほどの大きさだろう。
これなら毎日柄杓数杯の水を取り換えることで水は大丈夫そうだ。
私が安心しすぎて水を替えなかったせいで、
連綿と続くはずの彼らの命を奪ってしまったのだ。
この1匹は絶対に大人メダカになってもらおうと、猛反省している。