雪道を歩きたかったので遠出してきた。
今年も車にスタッドレスタイヤの出番はなく、
タイヤ交換などしなくても良いのが当たり前になりそうだ。
それでも、少しばかり雪山を感じたい。
冬用タイヤはそんな思いのために4月になるまでつけたままにしている。
大体車も毎年、一度だけ雪道を走ってみる。
去年は行けなかったから、
今年はどうかと思っていたけれど、
やはり、アプローチの道はすっかり乾いていた。
高原道路の車窓に映る白樺の森に残雪のかたまりが一つもなかった。
こんな光景は珍しい。
そんなわけで安全に駐車場に着いたのは良かった。
何しろ雪の坂道はとても恐いし、運転経験も少ない。
私の雪道体験とはせいぜいこの駐車場の先にある、
日陰の車道50mを走ることなのだから。
この山は雪の季節はいつもなら駐車場を降りた途端に地面は凍っている。
ところが、森に残雪が見えなかったように、
今日はアスファルトが乾ききっている。
あんなに寒かったのに今年は暖冬だったのか。
駐車場の先には山へ入る登山口がある。
下山してきた女性がそこでアイゼンを外していたので、
私も早速冬靴に装着することにした。
6本爪の軽アイゼンを使うのは2年ぶりだ。
嬉しいことに登山口からの斜面道には雪が残っていて、
アイゼンのザクッザクッと刺さる音がとても心地よく響いた。
今日はこの感じを味わいたいために来たから、
お昼近くの遅い入山となった。
歩き出すとすぐにお昼になったので丸太に腰掛けおむすびを食べて休み、
一つだけでもピークを踏めたら良いなあと思いながら、
熱いお茶をのんだ。
尾根に着いたらここには小さなピークがいくつかあるから、
3時までに下山するには一つぐらいは行けるかもしれない。
だから、急ぎ足で歩いた。
でも、アイゼンの歩行は普通とは違う。
ピークの直下は急峻な場所があり、
それを思い出してしまい何だか心が萎えてきた。
時間は2時に近いし、ここで引き返そう。
3時には駐車場に戻り、
雪の残る駐車場奥の日陰道を50mほどだけ走ってUターンした。
ここはなぜか雪が凍って残っているから、
下手に止まると車体が滑ってしまう。
雪道の恐ろしさを忘れないようにこのぐらいは経験しておきたい。
そんなミッションは済んだのに、
目の前のピークを踏めなかったことで心がモヤモヤとしていた。
遠い道のりを来たのだから無理しても行けばよかった。
ずっとそう思いながら帰路を急いでいる自分がいて、
いつの間にそんなふうになっていた自分に驚くのだった。