大勢の人数で山を登る時は、
その中で一番足の遅い人に歩調を合わさなければならない。
その人が歩けなくなったりしたら、
パーティ全体が山を諦めなければならないからだ。
先日の山歩きは正にそういうことを強く学ぶ機会だった。
元々足の遅いドンちゃんが最初から危なっかしいのである。
それでも、一緒に歩きたい気持ちは強いのが分かるので、
彼女の後に健脚の友人がついて歩くことになった。
当初、私が提案した予定は、
行き道を長い尾根をとり、下山に最短の沢コースというものだった。
でも、健脚の友人が下山コースから登ろうと言う。
彼女は、ドンちゃんの足が先に進むことが無理になった場合、
全くエスケープルートのない長尾根では不安だと言うのだ。
短い沢の道なら自分が一緒にゆっくりと下山するからと。
確かにアップダウンが幾つも続く尾根での引き返しは難しい。
健脚の彼女は自分が我慢しても仲間を見捨てない人なのである。
そんなわけでリーダーの私も納得し、健脚の彼女の言う通りにした。
私は沢からの道をこの夏に歩いていて、
おおよそのコースタイムや危険個所も熟知していた。
ドンちゃんもどうにか歩き通してくれるかもしれない。
先頭で振り返りながら、難所?を越える仲間たちを見守って歩く。
ここはわずかな杉の道を過ぎると広葉樹になり、
いきなり黄や緋色の艶やかな世界が飛び出す。
それぞれが感嘆の声を上げ、尾根を目指す。
私はドンちゃんの最初の様子がずっと心配だったけれど、
優しい健脚の友人に見守られながら、
最後の岩場をこなし、標準タイムの倍をかけたとはいえ、
全員揃って尾根に立つことができた。
ここからは往復一時間ほどかけて三角点のある山頂を目指す。
そこまではアップダウンが幾つかある。
尾根に残って食事の用意をして待っていると健脚の友人が言うので、
一同8人のうち6人が荷物を置いて山頂に向かった。
その尾根道のめくるめく広がる錦秋の景色には目を奪われた。
初登頂の仲間を先に登らせ、大きな標識の前で記念写真を撮り、
ゆっくり浸る暇もなく待ち組のいる場所まで走るようにして戻る。
私たちは湯気の立つ暖かいスープを飲み、すぐに下山にかかった。
膝の痛む仲間を加え3人はそのままピストンで来た道を戻る。
残りの5人で予定通り長い長い尾根を進む。
恐らく4時には3人の待つ登山口に着くだろう。
尾根は一つピークを越えると次のピークが現れ、
数えられないほどのアップダウンが続いた。
それにしても里山の深秋の尾根の何と美しいこと。
空に続く峰々に色鮮やかな歓声を上げるたびに、
同じ道を戻っている3人にもこの景色を見てもらいたいと強く思った。
登山口で寒い中、2時間も待ち組を待たせたけれど、
このサポート隊?のおかげで私たちアタック隊?は、
十分すぎるほどの山の時間を堪能することができたのである。
でも、今後の隊?における
「ドンちゃんや膝痛仲間をどうする?」という深刻な課題も見えてきた。