先日のこと、ガラスのかけらが指に刺さって以来その痛みが取れず、
私がとても落ち込んでいると察した友人がハイキングに誘ってくれた。
山を歩いていると自分よりも自然がドンと前に来るので、
日頃の憂さを忘れそうになる。
それで少しは救われるのだ。
そのことを友人はよく知っている。
目指す場所は山の家から50キロぐらいのところにあり、
そんなに遠くないので、駅で彼女を拾って電車ではなく車で行った。
彼女とは2か月ぶりの再会である。
まだまだ真夏と変わらない暑さのために訪れる人もおらず、
駐車場にはハイカーの車は1台しか止まっていなかった。
二時間以上運転したけれど、
車でのアプローチだからつまらない車道歩きをしなくて済むらしく、
久し振りの私にとって体力的にとても助かった。
友人にルート案内を任せ、私は軽いリュックで彼女の後ろを歩いた。
彼女の説明によると、この山は隣り合う山と二つ合わせて歩くのが定番らしい。
けれど、今日は私のリハビリのために来たので一つだけにしようと言ってくれた。
内心は二つの山ともよく耳にする山なので両方歩きたいけれど、
こちら側の峠の登山口だとかなり時間がかかるそうだ。
立派な杉林の続く日陰の道を2時間ほど歩く。
途中でキノコ観察などをしながらゆっくりと進み、
最後になだらかな公園のような広い山頂に着いた。
残念ながら空は白くかすんでいた、
富士山やこの地域の山々は何一つ見えなかった。
それでも、山頂にいると心から満足する。
特に生まれて初めて歩く山は格別だ。
山頂に着くと空が晴れてきたので日陰を探して丸太に腰掛け、
友人が作ったにゅう麺をご馳走になった。
「山のランチは久し振り」と喜ぶ私に彼女も嬉しそうだった。
実はこの日、私はとんだ忘れ物をしたために、
雨具やコッヘルなど彼女が二人分持ってきてくれたのだった。
山道具の入ったリュックを車に積み忘れていたうっかり者の私なのだ。
ここは東京地方の人々に人気の山で、
真夏以外なら土日はもの凄い数のハイカーがやってくるらしく、
平日だって賑わうらしい。
それなのに今日は私たちだけの貸し切りなので、
もう10回以上も来ているという彼女はとても驚いたらしく、
そのことを何度も繰り返し言った。
食事をした後、二つ目の山の尾根道を眺めて確かめてみたけれど、
確かにかなり下ることになる。
まだ時間はお昼なので戻って来ても良いが、体力に自信がなかった。
健脚の彼女が「今度はあちらも歩きましょう」と言い、
予定通りピストン(行と帰りが同じ道)で下山にかかった。
(写真 ナメコに似ていたが、同定できないと絶対食べない)