友達に誘われて山梨の山で遊ぶことになった。
中央線の駅からオンデマンドバスに乗ってとある場所で降り、
そこからいきなり山へ入っていく。
仲間は1年前もここを歩いたらしい。
ここいらは彼女たちのテリトリーで、
まるで自分の家の庭みたいに地理を熟知しているが、
私にとってはバス路線も登山口の名さえ初めて聞くものだった。
中央線の山は私の住む地域と違って杉が多く景色が悪いけれど、
初めての地を歩くのはとても心が弾む。
しかも、今日は長い縦走だから山の夜を楽しめるのだ。
心優しい友達はへたれな私に荷物は持たせず、
彼らの背中の荷は15キロほどあって、
まるで私のポッカをやってくれているみたいで申し訳なかった。
私が運んだのは共同装備の水と行動食のみでおかげでルンルンだった。
しかし、最近の局地的な暴風雨は山を荒らす。
道がなくなったり、大木が倒れていたりと要注意だ。
ここもしょっぱなから沢にかかる橋に大木の小枝がかぶさり、
泳ぐようにして進まなければならなかった。
山道には女三人、明るい笑い声が絶えず響き、
広い尾根に辿ると3時頃にはお目当ての適地に着いた。
ここは地図に道のない広葉樹の森で緩やかな尾根上にあり、
当然ながら人は誰も通らない。
「ほら、ここがホテル、良いところでしょう」と、
何度も繰り返す友の声が弾む。
私の都合に合わせこの日を準備し、
これから美味しいお酒と野外料理を披露してくれるのだ。
何と奇特な仲間たちだろう。
豪華ホテルの一夜が楽しみだ。