隣町の友人の家に用事があって出かけてきた。
その日は朝の散歩をさぼったので、車は使わず歩いていくことにした。
思い立ったのがお昼をとうに過ぎていたので、家を出たのは3時過ぎ。
秋はつるべ落としと言われるようにあっという間に暗くなるので、
帰りは電車で帰るつもりだ。
わが家は歩いて10分で支線のA駅があり、
友人宅の家も同じような距離のところにB駅がある。
家を出てしばらく国道沿いの歩道を歩くと、
右に入れば広い田園地帯の農道になる。
国道経由と違い最短距離で友人宅に向かう感じになる。
白いそば畑を過ぎると、稲穂が一面黄金色に染まり、
刈り取られる直前の稲田が続く。
たわわに実った一つ一つの米の穂は少しずつ色あいが違い、
その形も同じものはないのにあらためて驚く。
こうして歩いていると、実りの秋の風景が心に染みわたってくる。
今夏は暑すぎてお米も豊作ではないらしいけれど、
黄金の絨毯の広がりは、私の目には確かな実りの風景に映る。
農道には車の通れない細いトンネルがあり、
そこは農家の人達だけが使う狭い隧道だった。
上は高架になって車道が走っているのである。
車でそこを通る時、遠くに見えるトンネルがいつも気になっていた。
少し恐いけれど、
このトンネルをくぐると友人の家はすぐのような気がした。
光の先にきっとあるだろう。
そんな思いで小走りに通り抜けたら、右手には鉄道が見え、
友人宅のすぐ近くの交差点が見えた。
鉄道はA駅とB駅をつないでいる線路だ。
二つの駅の間を歩いたことになるのがちよっと不思議だった。
わずか小一時間の歩きだったけれど、
自然や地理を学んだ豊かな時間だったと思う。