車を運転していたら窓の向こうに、
ふいに白い山のようなものが出現した。
そこは建築会社の敷地らしく、白い山は砂利が積まれたものだった。
それはまるで高い山の稜線のように見えた。
町中の平地に出現した高山が心の琴線に触れたらしく、
そのまま通り過ぎることができず、
私は車を道路際に止めてその光景を写真に収めた。
そして、映った写真を見ると、
白い山に小さなリュック姿の人物を置きたくなった。
そうすると、人が稜線を歩いているように見えるに違いない。
そう考えると、実際に登ってみたくなったけれど、
他人の敷地だからできるわけがなかった。
このことを同じ道を通ってきた友人夫妻に聞いてみた。
すると、彼らの返事は私の期待に反し、
ただの砂利置き場だとしか思わなかったということだった。
日常の中にふと現れる見慣れない光景に、
私の感性はたまらなく影響を受ける。
わざわざ車を止めてまで写真に収める私と、
何も感じることなく走りすぎる彼らと、
この両者の感性の違いは何だろう。
それはこういった目に映るものに限らず、
世の中の出来事に対しても同じことが言える。
だからこそ、人間社会は複雑で面白いのだけれど、
少しは私の驚きを分かって欲しかった。