お昼に贅沢なおフランスをコースで食べた日の夜は、
さすがにお腹が空かなかった。
とはいえ、いつものように何か作らなければならない。
冷蔵庫にはストックのご飯がなかったので、
小さなメスティンでご飯を炊くことにした。
このメスティンは今までのメスティンの中にすっぽり入り、
いわゆるスタッキングがなかなか良い。
そのせいで一時ネットで話題になり、
在庫がなくなったほどだったけれど、
今はキャンプコーナーに山と積まれている。
私は夕食に1合だけお米を炊くときは時々これを使う。
アルコール燃料を50ccほど入れた自作のアルスト缶に、
火をつけて乗せれば「ほったらかし炊飯」となり、
燃料がなくなる頃には1合ちゃんと炊けている。
火の番はしなくて良いからとても楽だ。
一人だったらこのまま食べるのでお茶碗も汚さない。
おかずは食べる気がないからお茶漬けならぬお湯漬けにする。
このお湯はご飯を10分間蒸らしている間、沸かす。
ランチのおフランスとは比べ物にならない質素でかつワイルドな食事だ。
今日はアルコールに火をつける時、
生まれて初めてファイヤースターターなるものを使った。
これも100円のしろものだけど、火打石の原理でできているみたい。
小さなアルストに向かってカチッと強くこすり合わせると、
線香花火のような火花が出る。
難しいと思ったのに3回目で缶からポッと炎が立ち上がった。
大昔の人は石と石を叩き、松や杉の葉などに着火させてのだろう。
私も子供の頃、兄や姉たちと海岸で拾った白い石を叩いて遊んだものだ。
それは真っ暗な部屋で神秘的な輝きを一瞬だけ見せてくれ、
子供の私たちを幻想の世界に誘った。
ふとそんなことを懐かしく思い出し、
ウニの味がほんのりと口に広がるお湯漬けをすすっていた。
(写真下 鍵のような棒を強くこすると火花が出る)