先日、出かけた時、お昼に下町にある居酒屋風の店に入った。
そこはテーブルが二つと調理場を見下ろすカウンターがあるだけの、
とても小さな店だった。
全体にレトロな情緒が漂っていて、
入り口の外には箱を置いただけのテーブルもあり、
屋台風にも見える。
狭い壁全体にメニューがベタベタと貼ってあり、
その数の多さは半端ではなかった。
塩サバ定食、アナゴ定食、サンマ定食、アジフライ、牛カルビ、
天丼、ハンバーグ定食、かつ丼、ラーメン、レバニラ定食、
その他、考えられるほとんどの料理が手書きで書かれていた。
ここまで何でもありとはと、驚いてしまった。
しかもそれらは大体が高くても1000円と安いのだ。
その品数を狭い調理場でたったひとりのおじさん?が作っていて、
大丈夫なのかと心配してしまった。
いっぺんに何人もの注文をこなせるのだろうかと。
最近はこういうお店をテレビ局が取材したりする。
ユーチューバーやインスタ好きの人が発信して広めるので、
ここにも有名人が訪れたようだ。
現に何やら知らないスター?らしき人のサインも貼ってある。
壁のメニューにチャンポンがあったので、
チャンポン好きな私は恐いもの見たさで注文してしまった。
おじさんは麺はラーメンのものを使っていて、
本場モノではないと正直に説明してくれた。
何やらその時の話しぶりにとても好感を持った。
すぐそばで野菜を切る音がして、
その後ジュージューと炒める音がした。
あっという間に仕上がったチャンポンを、
おじさんがテーブルに運んでくれた。
確かに見た目はチャンポンの特徴はあまりなかった。
醤油色をしたスープを一口すすった途端、
そのしょっばさに飛び上がるほど閉口した。
とてもそのままでは食べられないではないか。
おじさんが後ろを向いている時、そっと冷水を椀に注いだ。
調理場のおじさんの目を盗んで水で薄めること3回、
それでどうにか中身を食べきった。
本当はお湯を欲しかったけれど、
好々爺ふうの店主にお湯を下さいとは言えなかった。
会計時にさすがに「美味しかったです」とは言えず、
「また、来ます」と言って店を出た。
味は濃すぎて閉口したけれど、
また寄りたいと思わせる雰囲気があったのだ。
隣の席にラーメンをすする常連さんらしき人がいたけれど、
その人の汁も同じ色をしていたので濃いに違いないと思うと、
私の方が味覚が変なのかと首をひねってしまった。
(写真下 いつもの食べ慣れたチャンポン)