玄関回りの芝の手入れをしていたら、小さな女の子か寄ってきた。
先日越してきたばかりの近所の家の子供のようだ。
「こんにちわ」と挨拶をするとちゃんと笑顔で返事をしてくれた。
続いてその子の父親がやってきて女の子と同じように、
ニコニコしながら「草刈り大変ですね」と、話しかけてきた。
ご近所の住民となるとどんな人かが気になるけれど、
この二人の感じからすると、どうやら心優しい人のように思えて少し安心した。
聞くところによると、家族は隣町からやってきたらしい。
小さな女の子はまだ幼稚園でお姉さんは中学生とか。
考えてみたら最近は初対面の他人とそんな話はしない。
昔だったら名前から年から会社からありとあらゆる情報をご近所は知っていた。
なぜならよく外で世間話をしていたからだ。
町会の名簿には連絡先なども書いてあったし、
今のように個人情報的なものはタブーではなかった。
我が家の前は子供がよく通るのに、玄関回りを掃除していても、
通学する子供たちがどこの子供か分からない。
高学年の子は私の後ろ姿がそばにあっても挨拶もせずに通り過ぎる。
大人に至っては車で出勤するためどこの誰だか皆目分からない。
災害などがあってもどこの誰がどうなったかというのも不明である。
この住宅団地が新しくできてすでにー昔が経った。
その頃、歩いて学校に通っていた子供は、
もうとっくに大人になって車に乗るようになり姿を見なくなった。
車社会とはこんなにも近所付き合いを希薄にさせてしまうのだ。
さて、あの新しい住人となったあの子も、
ひと昔が経てば大人になる。
ニコニコと挨拶をするのはわずかな期間だ。
それまでは必ず声をかけることにしよう、
そんなことを思いながら草刈りを続けた。