朝風呂に入った後、馴染みの蕎麦屋についたのは、
ちょうどお昼頃だった。
この店にはしばらく来ておらず、今日は2人の友達を案内してやってきた。
暖簾をくぐるとおかみさんがとても嬉しそうに手を広げて迎えてくれた。
昭和レトロな小さな蕎麦屋には男の客が2人いた。
靴を脱ぎ畳席に座ると、壁に貼られた蕎麦屋のメニューを見て、
遠来の友達はひどく驚いていた。
ここにはラーメンから丼物、定食に至るまで何でもござれだ。
「えっ、蕎麦屋なのに」と、多少見下した面持ちだけれど、
ここは田舎だ、お蕎麦だけでは店は成り立たない。
値段は都会に比べて格段に安いのだから。
ナス、カボチャ、シシトウなどの野菜の天ぷらを添えてもらうことにして、
三人ともざる蕎麦を頼むことにした。
これで600円也である。
以前、この店の味が薄味好みの私には濃かったので、
前に正直にそのことを話したせいか、
おかみさんが「うちで大丈夫?」と申し訳なさそうに、
確かめるように言った。
ここのおかみさんとは去年からの付き合いで、
彼女と本の話などをしていて気が合い、
月一ぐらいなら常連になっても良かったのだけれど、
何せ私はうどん派で蕎麦の味が分からない。
それに味が濃いときている。
それでも、とても気のいいおかみさんのために、
少しでもお客として貢献したいと、
通りすがりに看板を見ては思っていたのだった。
そこで今日は蕎麦好きの二人を連れて来た。
風呂上がりなので、二人は冷たい瓶ビールを注文してくれたので良かった。
車社会の地方都市ではお昼にビールを頼む人も少ないはずだ。
彼らが嬉しそうに乾杯していると、
おかみさんが私のために瓶のコーラを運んできてくれた。
またしてもサービスだ。
ここでは何度かコーヒーをご馳走してもらったことがある。
ギンギンに冷えたコーラはとても美味しくて、
ビールにも負けないほどのすっきりするのど越しだった。
私はおかみさんに感謝した。
やがて、運ばれたお蕎麦は程よい濃さのつけ汁で、
お蕎麦の量が食べきれないほど山盛りだった。
これもサービスしてくれたのかもしれない。
彼らに感想を聞いたら少し茹で過ぎとか言ったが、
お蕎麦の味が分からない私には何も感じなかった。
また来月に食べに行こうと強く思っている。