花火を見るために山に登ることにした。
ここは300メートル程度の高さの里山で、
数か月前に歩いたことがあって、
頂上が花火見物ができる良い場所だと思ったからだ。
花火は見上げるものだが、私たち三人はなぜか、
山上から見下ろす花火にひどく憧れていたのだった。
車で行くのではなく歩いて登っていく場所。
そこで冷たいビールを飲み、おしゃべりしながら見物する。
雑木林の山道を登っていくと30分程度で山頂に着くこの山は、
朝に夕に地元の人たちが散歩している平凡な里山に過ぎない。
でも、真夏に里山を歩く人はいないし、
もし花火を見物したとしたら帰りは暗闇の中を下山しなければならない。
だから、頂上には誰もいないと思った。
案の定、広い頂上は私たちだけだったので小躍りした。
望遠鏡で下を覗くと見物客の姿が蟻のように見えている。
コロナ第7波の最中に開催される花火大会なのだ。
人が群がるのも仕方がないけれど、
こちらは広い山頂広場でたったの3人。
贅沢この上ない桟敷席ではないか。
私たちはビールを飲みながら、
下界に花開く大輪の数々に歓声を上げた。
まっすぐの方向に仕掛けがあるので全体像が見えた。
距離があるせいで光と音のズレが迫力を損なったが、
その大きさは想像した以上だった。
5円玉?CDほど?などと大きさを想像し合っていたのだけれど、
花火の花形スターマインは両手を輪にしたぐらいに大きかった。
夜空を赤や青に染め明滅する光の饗宴は1時間程続き、
私たちは子供のようにはしゃいで最後まで立ち尽くしていた。
この日のことはきっと一生忘れられない思い出になるだろう。
こんな素敵なアイディアを実行してくれた友に感謝している。
(写真 花火の写真は撮っていない)