先日、バラ園が賑わっているというニュースがあった。
画面に映る赤やピンクの花、何と美しいのだろう。
満開の桜にも心騒がされるが、バラはまた一味違う。
そのバラ園は50キロ以上も遠くにある。
友人を誘ってみたら、良いことを知った。
そんなに遠くまで混雑するところに出かけなくても、
すぐ近くにバラ園があり入場料も要らないという。
早速、車を走らせ友人を拾い、バラ園に向かった。
そこは確かに10分もかからない近くにあって、
入り組んだ裏通りの住宅街にあるのに駐車場には車が絶えることがない。
その施設とも言うべきバラ園は、とある鉄工工場の敷地内で、
広い庭に様々なバラが植えてあった。
経営者がバラが好きなのかいつの間にか敷地はバラ園状態となって、
誰もが鑑賞できるように取り計らってくれている。
きっと奇特家なのだろう
園内のあちこちにはシックに統一された東屋やベンチが置かれ、
お昼時はのんびりとお花に囲まれながらお弁当も広げられるという。
この時期の何日かだけ解放されるらしく、
宣伝などしていないのに花好きの人々の口コミで知れ渡ったようだ。
バラはピークを過ぎていてちょっと残念だったけれど、
中には瑞々しく開く見頃の花もあった。
バラの花びらの重なりは深淵そのもので見るものの心を圧倒する。
じっと見つめていると、フランスの詩人リルケの墓碑を思い出さずにはいられない。
西洋のお墓にはこうした詩などを刻んであるものがよくある。
『薔薇 おお 純粋な矛盾 よろこびよ
かくもあまたの瞼の奥に何人の眠りでもないといふ』
リルケはバラの棘で亡くなったという噂もあったほど薔薇が好きだったのだ。
これは旧語体の訳だけれど、私はこの方がぴったりとして好きだ。
薔薇には何か重厚な雰囲気が漂っているから。
友人にそのことを話すと、キョトンとしていた。