函館の旅④
標準時間の倍近くかかってゴロゴロとした火山岩の恵山を下りた。
その途中、足元の赤い岩の間から熱い湯気が噴き出している箇所が幾つかあり、
活火山を歩いているのだなと実感。
車に乗せてあげたひとり旅の若い女性は、
山頂で私たちを長いこと待っていてくれた。
そして、スマフォで頂上標識と共に三人揃った記念写真を撮った後に先に下山した。
この山では家族で登っていた高校生が先に下山して登山口に戻っておらず、
何年も経っているのに未だに行方不明のままだ。
そのことは外国人の彼女には片言の英語で教えたけれど、
一緒に来た私の友人には下山するまで内緒にしていた。
写真を撮った後、若い彼女は私のメールアドレスをメモし、
宿に帰ったらWi-Fiで写真を送ってくれるという。
何という便利な時代になったのだろう。
季節は秋だけれど、この山はツツジが名物のようだ。
花の時期は広い駐車場がいっぱいになるのだろうか。
花も人気のようだが、ここは死者を呼ぶ恐山の役目もしているようだ。
遠く登山者に見えるのはどうやら衣装をまとった人形のようでもある。
若い彼女をレンタカーの後部座席に乗せて、
道の駅「なとわ・えさん」に寄り昆布などの土産を買い、
来た道を戻った。
ところが、時間が日の入りの時刻とぶつかったため、
空からの太陽とそれを反射する海原の太陽の二つの強烈な光が運転の邪魔をした。
眩しくて運転ができない。
眠そうになっていた友人に少しでも光を遮るように頼む。
その眩しさといったら道路の中央線すら見えず、
視界が真っ白くなる場面が何度も襲い続け、
私は函館に着くまでの約1時間半余り生きた心地がしなかった。
やっとの思いで駅に着き女性を下ろしてあげ、
明日は青森に行くという彼女に別れを告げた。
それからすぐ前にあるレンタカー屋で地元のスーパーの道を聞き、
夕食の買い出しをした。
こんな長い危険な運転は後にも先にも初めてだったので、
無事に帰ったのが嬉しかったけれど、
このことは北海道の忘れられない思い出になるだろう。
ホテルに戻ると、昨日に引き続き友人は温泉に浸かり、
私は買ってきたビールでくつろいだ。