湖水通りを歩いていたら、
瑠璃色のオオイヌノフグリが一面に咲いていた。
木々はまだまだ冬模様だけれど、
地中は春の準備がすっかりできているらしい。
黒い木々の間には銀色に光る湖水が覗き、
遠くに白い雪をかぶった山も見える。
この場所は水辺公園の中でも絶景の場所で、
私は必ず立ち止まって景色に見とれてしまいカメラを構える。
花は季節の順番を当然のように守り、次々と咲き出す。
それから大地を黄色く覆う菜の花の群れ、
そして、菜の花と棲み処を分けて、
ゆらゆらと風になびく赤紫のダイコンの花。
そうするうちに気温は上がり、汗ばむ初夏になっていく。
ここでは自然の一連の循環が繰り広げられ、
五感にも心にも沁みていく。
それこそがまことの時で、それこそが人生でもある。
でも、今、この同じ時に、
生死にかかわる問題に直面している人たちがいる。
私のように健康のために散歩するなんてもう夢物語なのだ。
大国のでっち上げで火ぶたを切った無慈悲な戦いは、
どのくらい続くのだろうか。
どうしても想像してしまう爆撃の恐怖。
人の命を塵のように考える人がいるなんて、
世界中の良心ある人々は嘆いている。
丸い地球の美しい風景は、
どんな国の人たちにも平等に用意されたものだ。
その風景は幼い子供にも成人男女にも老人たちにも、
押しなべて広がっている。
私がこうして路傍の花に心躍らせることができるのは、
決して奇跡だからではない。
たまたまそれらの国に生まれなかっただけだ。
ただ暗澹たる思いで鬼の去る日を待つだけの自分が悲しい。