堤防を歩いていたら屋根のあるベンチのそばに人がいた。
平日のせいか散歩する人も少なく、
1時間の間に犬を連れた人に会ったきりだ。
そのため目的もなくいるその人におのずと警戒心が湧いた。
少し腰を下ろして輝く空を眺めて休みたかったけれど、我慢して通り過ぎた。
しばらく歩いてから恐る恐る振り向くと、
彼の姿が小さくシルエットとなり、あたりには相変わらず静寂が漂っていた。
たまにこうして来る者にとって広い川の景色は新鮮で美しく、
水の流れは悠久の時を知らしめしてくれる。
壮大な地球のドラマの一部を垣間見ているようで厳かな気分にもなる。
目的の橋を見定めると再び来た道を戻る。
先ほどの男性の前をまた通らなければならない。
少し緊張したが、その人はベンチを離れ川の方に向かって立っていた。
もちろん私の方を振り向かなかった。
ベンチには荷物がたくさんあった。
この人は明らかに散歩人ではない。
また地元の人でもないようだ。
足元にゴミ袋もあったので、もしやするとここで寝泊まりしているのか。
自転車にも荷物が下がっていたので転々と移動しているのかもしれない。
もし、この想像が当たっていたとしたら、
これからの寒空の下でどう夜を過ごすのだろう。
年の頃はまだ40代のように見えた。
一体、どの時点でその人はこういう日々を余儀なくされたのだろう。
住所がなければ仕事探しもできやしない。
何やら心が塞がり、体が重くなった。
金魚の水槽を洗いに来た自分がむしろ非現実に思われた。