昨日は出先でまとまった時間が取れ、ひとりで野山を散歩してきた。
名所の滝を見て帰って往復約3時間ほどの散歩となる。
入り口の公園には散歩人の車が5台ほど止まっていて、
休日と違い閑散としていた。
一応車の窓にカーテンを張り巡らせて服を着替え、
それが済むと外に出て靴も履き替えた。
ここは公園とは言ってもかなり広い丘陵地なので汗をかくだろう。
散歩が終わったら、また元の服に着替えなければならない。
去年も同じ頃にここを歩いた時、
通り道の灌木に張り付いたヤマイモの蔓にあちこちムカゴがついていた。
あの時はひとりではなく、
ワイワイと騒ぎながらムカゴ採りに精を出したっけ。
二人で採ったムカゴは翌日のご飯に炊き込んだ。
それにしても今年はムカゴが一つもついていない。
誰かに採られた後なのか。
そんなことを思いながら、ムカゴを探していると、
ポシェットの中の携帯電話が鳴り響いた。
受話器を取ると?いや、携帯画面のボタンをクリックすると、
何と偶然にもその時一緒だった人からの電話だった。
ムカゴの話をしたら、
「去年はもう少し早い時期ではなかったかな」と言われた。
よく考えたらそうなのだ。
家の近くではもうひと月も前あたりからムカゴが採れていたのだし、
いつまでもムカゴがあるわけがない。
最近は月日の経過が早すぎて私の体感を超えている。
長々と世間話をした後、
「今から滝まで歩くから、またね」と言って、電話を終了した。
携帯電話のバッテリーが一本線になっていた。
帰りのためにバッテリを残したいので、電源を切って歩くことにする。
この時期にお花を期待してはいなかったけれど、
暗い森から明るい丘に着いた時、
白い小さな花が咲いているのに出合い、驚かされた。
可憐なセンブリの花が何本も満開になっている。
私は一休みし、葉っぱを一つ噛み、その苦みを味わった。
この花は漢方ではなく日本古来の生粋の生薬だ。
私は心の中でこの場所を「センブリの丘」と名付け、
その花を少しだけ頂いた。