ワインを開けるたびに思う。
色は濃いか、薄いか、香りはどうか、涙はどうか、
どんなに安いものでも最初の一口で何らかの反応を示そうと。
「渋い」とか「軽い」とか、そんなありていの言葉では駄目だから、
様々な形容を見つけて表現したいと思う。
たとえば「古典的な渋み」とか「干し草の香り」とか、
そんな何だかよく分からない形容。
ただの飲み物の味に想像力を膨らませるというのが、
ワインの面白いところなのだろう。
だから、かなり頭を使うお酒に違いない。
ワインの本場のヨーロッパでは日常使いのものは、
水よりも安いものも多い。
だから、たまにその何倍もする値の張るワインを買った時は、
味に蘊蓄を言いたいのだろう。
先日買ったワインはチリ産の税抜き400円のものと1000円のもの。
私の日常買いの範囲のものだ。
味を表現するため、2本交互に飲んでみた。
チリ産にしたのはコスパが良いとのことだからだった。
値段は後者が2倍以上するけれど、
ワイン初心者の私には評価がひどく難しい。
安い方は飲みやすくて素直に美味しいと感じ、
その倍以上するもう一本のワインは、
深いブドウの味が喉に染みたけれど、
果たしてこれが2倍の味かと思ってしまう。
おそらくもう少し高級な後者の倍ほどの値のワインを開けたら、
きっとまた評価が変わるだろう。
だから、私にはとてもワインの味鑑定やコスパの評価はできそうにもない。
これは、まるで安物バイオリンと銘品バイオリンの聴き比べによく似ている。
プロの奏者が演奏すると、
プロでさえ10万円の初心者用と300万円以上の音を聴き分ける人は少ない。
なぜなら値段に比例して100倍も良い音というものはないし、
人間の耳には限界があるからだ。
それと同じようにワインも飲み比べて格付けはできそうにない。
人間の舌もそれほど万能ではないのだ。
そんなことを考えてみると、
今回買った安物ワインはなかなかコスパが良いではないか。
まだ置いてあったらまとめて買うことにしよう。