ちょっとした日常の仕草や行動の折、
必ずそれに伴って思い出したくない出来事が脳裏を一瞬かすめる。
良い思い出はこんなふうなかたちでは思い出さないのに、
思い出したくない出来事に限って頭をもたげるのだ。
たとえば歯を磨く時、トイレのドアを閉めるとき、
スニーカーに足を入れる時など、いやな思い出が甦る。
内容は失敗したり、傷つけられたりした過去のことだ。
歯を磨いている時思い出してしまうのは、
その時にたまたま歯を磨いていたからである。
他も然りである。
誰だって嫌なことは思い出したくないのにどうして?
前に友人が言っていたことを思い出す。
私が「それは思い出せない」というと、
「忘れてしまうものは忘れるほどの価値しかない」からだと。
とすると、毎回のように思い出してしまうのは、
忘れてはいけない価値あるものなのか。
そんなことはない、
できれば嫌な思い出は記憶そのものを削除したいほどだ。
でも、なぜ毎回思い出すのだろう。
きっとそれは、私にとって屈辱、
もしくは痛手になったからに違いない。
人は傷つけることは平気だけれど、
傷つけられることに慣れてはいない。
その希少さ?が嫌なことを忘れられない理由になっているのかもしれない。
だから、忘れようとしても何かの行動のたびに頭をもたげるのだ。
もちろん一瞬で消えていくが、なぜか毎回繰り返される。
人間の脳というものはとても厄介で複雑である。
こんな思いをするのは私だけだろうか。