しばらく通っていた歯科医院への通院が終わった。
今回は差し歯が取れたので左右の歯にブリッジする治療だった。
その治療が終了して、今日は仕上げのクリーニングという。
この歯科医院では歯のクリーニングは年に2回、
定期的にやるように葉書の案内が来る。
今回は差し歯の治療のついでにやってもらうことになった。
思い起こすと、虫歯のなかった私は、
その自信過剰が災いして食後の歯磨きを怠り、
そのため歯茎が弱り、これまで何度歯医者に通ったことか。
お腹の痛みなら我慢はできても、
歯の痛みは医者嫌いの私でさえ、すぐに歯医者に連絡する。
私の通う歯医医院はピカピカに明るく、
真っ白な清潔感漂う治療室から眺める南洋風のヤシの葉の風景が、
まるでホテルのように感じられる。
けれど、治療はリクライニングシートに横たわり、
ずっと目をつぶって我慢しなければならない。
だから、歯に当たる刺激的な感触と音だけが伝わり、
何をされているのか分からず、
頭の中は電動工具のイメージばかりで恐ろしくなる。
歯のクリーニングは医師ではなく歯科技工士がやっている。
作業の一部始終を丁寧に説明しながら口の中をいじっているが、
こちらはドリルが歯茎に当たらないか不安でならない。
私は電動ドリルや金づちなどを想像しているけれど、
そもそも歯科の工具はどんなものだろうか。
治療の様子を自分の目で確かめたいけれど、
患者が目を開けていたら施術する方はとてもやり辛いだろう。
隣の治療室で子供が泣きそうになっているが、
あの子はきっと目を開けたに違いない。
やはり、治療は見えない方が良い。