雪があるのを期待して、
ドライブがてらちょぴり遠い山に行ってきた。
いつもの年なら駐車場からアイゼンを靴につけ、
冬装備で歩きださなければならないのに、
今日は案の定全く根雪のようになった残雪がなかった。
これなら300m上の山頂も夏山と変わらないだろう。
この山には雪の多い年だと数メートルほどの雪庇さえできる。
そのため夏と冬ではルートも異なる。
去年もそうだったけれど、今年は本当に残雪が少ない。
駐車場に着いたのは昼近くだった。
コロナウイルスのせいで街に行けない分、
ここも登山客が増えているようだ。
日曜日ということもあって、子供連れのハイカーが何組もいた。
小一時間ほど登ったコルの広場で、
強風を避け窪みを探し、コンロで昼食を作っていたら、
人懐っこい小さな元気な女の子が寄ってきた。
この子は途中のドロドロ道で手を支えて上げ、
その時、母親とも話を交わし、少し親しくなっていた。
彼女は私たちの食事の様子を遠くから見ていて、
保育園児だというのにそのやり方がとても気になったらしい。
好奇心旺盛な子なのだ。
どうやって熱々のラーメンを作ったのか説明してやると、
嬉しそうに若い両親に報告しに駆けて行った。
ここから往復1時間ほどの山頂に私達が行くと知ると、
自分も行きたいと親に駄々をこねたけれど、
両親はもうひとり下の子を抱いていて、
ここまでがやっとなのだった。
私たちについて来ようとするので、
「小さいのによく来たね、下りはもっと大変だから頑張ってね」と頭を撫で優しく諭すと、
やっとあきらめ、両親のもとへ戻った。
リュックを背負い、
「行ってきます、バイバイね」と、彼らに手を振ると、
私たちに向かって何度も手を振ってくれた。
山頂へ続く尾根道に彼女の元気な声がしばらく響いていた。
その時、私は「ヤッホーするからね」と言わなかったことを後悔した。
忘れていたのだった。
もし、何度かヤッホーの駆け合いをしていたら、
あの子はもっと山を好きになったことだろう。
そう思ったからだ。