紺碧の青空のもと、錦秋の山を歩いてきた。
保育園児が登れるほどの山だったけれど、
富士山を始め名だたる名峰の景色が素晴らしかった。
私は大勢の仲間とおしゃべりをしながら歩いていたのだけれど、
下山中にすぐ向こうの方に気になる峰があったため、
ひとりだけ「ちょっとそこへ寄って来る」と言って皆から離れた。
メインの山は賑やかだったのに、
その平たいピークには誰もいなかった。
でも、先ほどの山がくっきりと空に浮かんで感慨深い。
どうやらここにも山名が付けられているらしい。
うふっ、私は皆より一つ多く頂を踏んだのだと思い嬉しかった。
写真を撮ると、余計に歩いた分を取り戻そうと下山を急いだ。
途中で彼らの姿が列になって見えたので「ヤッホー!」と叫んだ。
何人かが気付いて手を振って返した。
追いつくのはすぐだろうと思った。
ところが、駐車場に着くと、
先に下りているはずの仲間の姿がなかった。
下山してきた夫婦に聞くと、途中に一つ小さな山があるので、
そこを経由したのではという。
そこは本命の山よりも標高が高く、
自分たちもそうしたと言う。
つまり、メインの山とその山は二つ合わせて登られているのだった。
しかもより高いだなんて。
てっきりピストンだと思い込んでいたのだ。
私は再びみんなを迎えに登り返した。
10分ほどで賑やかな声が聞こえてきた。
案の定、彼らはもう一つの山頂を踏んできたという。
えっ! 私だけが行かなかったのか。
そう思ったらひどく悔しかった。
仲間と一緒に車まで行き、車に預かっていたものを渡すと、
私はみんなと別れてまたまた登山口に向かった。
往復1時間とちょっとだったけれど、
これをやらないとやるとでは天と地の差がある。
家に帰ってずっと悔やまれるだろう。
そう思ってがむしゃらに登り直したのだった。
我ながらこの気力は凄いなあと思った。