丹波山の先はさらにずっと深い山が続いている。
国道は曲がりくねっているが、渓谷や奥山の景色が美しい。
今は紅葉も見ごろだ。
用があってこの道を通った。
ここには「おいらん淵」という名所がある。
この手の名は全国各地にあって、
その名前からして昔の薄幸な女性たちの怨念が漂っている気がする。
しかし、怨念と言えばここが一番だろう。
おかげで有名な心霊スポットになっていて、
いるかどうか分からないけれど、心霊?マニアには垂涎の地だ。
以前、この先にある柳沢峠から、
黒川鶏冠山という山に登ったことがあった。
山中には金鉱を掘り出した金山跡地がある。
戦国大名武田氏の時代、
この黒川金山の金鉱採掘に携わった男たちが連れてきた55人ものおいらん達は、
武田氏が信長に滅ぼされると、
金山への道を知られないために殺された。
無情にも淵に吊るされた踊り舞台の縄を切られ、
深い淵に落とされその有様は凄まじくむごたらしかったという。
口封じの策だったのだ。
日本中にはよくそんな言い伝えが残っていて、
虚実は定かではないにしても、
あながち作り話ではないと思う。
常に弱い立場の女たちが被害者だったのだ。
おいらん達は親を助けるため、
或いは武田軍の人買いによって嫌々連れて来られたと思うと、
不憫でならない。
いつか立ち寄ろうと思っていたが、
今回も通り過ぎてしまった。
さて、そんな惨劇伝説が残る場を、
果たして訪れることはあるだろうか。