山にある家の草刈りを行った。
半年ほど放置していたら、石ころの下にはムカデが潜み、
水たまりからは蚊がうようよ飛んで、まるでビオトープだった。
中でも貧乏蔓と呼ばれるヤブガラシの強いこと、
雨どいを伝って屋根に上る勢いだ。
エノコログサもあらゆるところにびっしりと顔を伸ばしている。
それにしても草の繁茂力の強さには驚いてしまう。
生態系の用語で大分知られてきたビオトープという言葉。
ビオトープとは生き物が生息できる環境空間のことをいう。
雑草などの植物が繁茂していて水がある場所だ。
つまり、自然な環境の場所ということだ。
人間もビオトープの中で歴史を積んできた生き物だから、
大都会だけでは存続できない。
ビオトープがないと何れは砂漠化してしまう。
昔は自然な環境を完全に無視して護岸工事などが行われていた。
今は度重なる異常気象のせいもあって考え方が変わり、
なるべく生き物たちが生き続けられるような工法が進められている。
川を例に取れば、川底と両岸をコンクリートで覆ってしまう三面工法は消え、
どこかしら小動物が移動したりできるように工夫されている。
そうするといつの間にか自然は回復しはじめ、
ビオトープ的環境ができる。
公園も然りで、小路には杉の皮が敷かれていたり、
なるべく自然素材を使っているのが目立つようになった。
でも、吹き出す汗を拭い、
迫りくるやぶ蚊に襲われながら草刈りに追われていると、
庭全体に敷石でも貼ってしまいたいと思ってしまう。
やはり、人は楽になりたいのである。
だから、三面工法を良しとした昔の発想が、
哀しいことによく理解できるのである。