春のキッチンを美しいエメラルド色の鞘で飾ってくれたインゲン。
シャキシャキとした食感と独特の甘さは病み付きになるほどだった。
背の高さほどになったその蔓は、もうほとんど白茶けている。
鞘の実もかなり固くなった。
今日はそれを抜いてしまうことにした。
一列に並んだインゲンの長い茎を鋏で少しずつ短くしながら、
大きな紙製の米袋に入れていく。
2時間ほどかけてネットを露わにしたら袋はいっぱいだ。
ただ一つ気になっていることは蜂の巣だった。
インゲンの青い葉の茂みの中に蜂が巣を作っていたからだ。
この春、インゲンを収穫するたびに、
蜂の巣の白い部屋が増えていくのはなぜか嬉しかった。
いつの間にかそれを確認するのが日課になっていた。
ところが、今日は根こそぎ取り払うのだ。
蜂は近づいても威嚇などせず、
インゲンの林?がすっかり裸になったというのに、
せっせと巣作りに励んでいた。
蜂は周囲の景色?に鈍感なのか。
蜂のいる最後の一本に達したとき、
どうしたら良いものか考えた。
このまま放っておくわけにはいかない。
思案の末、根のところで切って長い棒にひっかけて移動させることにした。
呑気な蜂と直近で目を合わせながら、
そっと山茶花の葉の茂る庭の片隅に運んでやった。
視界が悪い方が以前と環境が似ているからと考えて上げたのだ。
今までは縦方向だった蜂の態勢が横になってしまったけれど、
蜂は今まで以上にリラックスしているように見えた。
やはり、鈍感なようだ。
いや、そうではなく蜂は私を敵だと思っていないのだろう。
若い頃は殺虫剤で殺していたはずなのに、
今は蜂を応援しているように思える。
蜂がいるのが自然なのだから、当然と言えば当然なのだろう。