人間の脳と言うのは本当に不可解。
「忘れたいこと」は絶対と言ってよいほど忘れることはできず、
ちよっとしたことから連想を促し、何と夢にまで出てくるほど。
反対に「忘れたくないこと」はどんどんと忘れてしまう。
大体「忘れたいこと」と言うのは、
自分にとって不幸なこと、不都合なことだ。
「忘れたくないこと」は自分にとって幸せなことと、
艱難(かんなん)とは関係のない知識みたいなものだ。
良いことは幸せなことで、そうしたものは忘れてしまう。
自然に口から発していた単語や名などの知識のようなものも、
自分には利害がかかってこないものだから思い出せなくなる。
一つ例を挙げれば、
「ブリオッシュ」という名がどうしても思い出せなかった。
友達と歓談していたときのことで、
なぜか二人とも思い出せずイライラした。
他の友人とは「ルッコラ」が完全に出てこなかった。
とはいえ、思い出せないというのは、私にとって心の傷みは伴わない。
でも、同じ今日のこと、ちょっとした出来事を聞き、
それで忘れたかったことがいきなり頭をもたげてしまい、
きっと夢の中でもうなされると感じた。
脳というのは人間の都合の良いようには作られてないようだ。
つまり、人間は忘れたいことからは逃げられない宿命を持っているのだろう。
こうなったらボケるしかない。