駅に降り立って目的のお寺の道を探していたら、
同じように案内板を見ている人がいた。
その人はバスに乗った方が便利と言ってくれたけれど、
私と連れは歩いて行くことにした。
その人も私たちの後ろを歩いてきた。
どうやらバスには待ち時間があったようだ。
とても有名な社寺だから見るものも多く、
御朱印目当ての旅をしているその人の知識は大いに役立った。
詳しい説明付きで、広い境内を二時間ほど一緒に見て回っただろうか。
見物が終わると、その人は御朱印をもらうために違う寺に行ったが、
宿泊地が同じ駅なので、「夜は居酒屋で会いましょう」と話しが決まった。
二時間も一緒にいたから友達のような気になって、
旅のその後の報告をしたかったのはこちらとて同じだった。
この頃は携帯電話というものがあり、
こうした一期一会の出会いも一度切りではなくなった。
面白いことにその人とは夜の待ち合わせの場所に行くまでに、
全く別の観光地で二度も出くわした。
あんなに観光客でごった返していたのに不思議でならない。
夕方に待ち合わせ場所の居酒屋で、その日のお互いの報告をした。
その人はあれから三つの寺の朱印を貰ったらしい。
朱印の旅とはそんなに面白いのだろうか。
私たちは生ビールと地酒を飲み、旅の一期一会に乾杯した。
でも、今日はこれでこの人と四度も会っている。
旅先での宴は三時間も続いた。
五度目はその人の住む遠い島になるようだ。
近いうち行きますとお礼のメールに書いたが、
さて、どうだろうか。
旅の出合いは一期一会なのだから。