街歩きをしていてお昼になったので、適当な料理屋さんに入った。
看板には美味しそうなランチタイムの写真があって食欲がそそられ、
友達も「ここにしよう」と言い、その店に入ることにした。
端に荷物がごちゃごちゃと溢れる地下の小さな店に下りていくと、
お昼のせいか半分ほど席が埋まっていた。
これから込むからと思い、食べ終わったらしいお婆さんの隣に座ったら、
「煙草を吸うけど良いか」と申し訳なさそうに言われた。
隣でモクモクされると食べるにはあまり良い気はしないので、「ごめんなさい」と頭を下げて空いた方のボックス席に移った。
ママさんらしき人がニコニコと微笑みながら水を持ってきて注文を尋ねた。
感じの良い人だ。
よく見るとこの席にも灰皿が置いてある。
あちこちから煙草の匂いがして来る。
何か懐かしく、時代錯誤に陥ったようだ。
どうやらこの店は煙草好きな地元の人のオアシスになっているみたいだ。
私たちのような遠方からの客はおらず、客が店主と歓談したりしている。
最近はほとんどが禁煙席になっているため、紫煙の舞うこんな店は何年振りだろう。
友達も平気だというのでそのままランチメニューを注文した。
味はちょっと甘めで口に合わなかったけれど仕方ない。
この話を知人にしたら、「私だったら喫煙のお店だと知ったら別の店に行く」と言われてしまった。
私たちは愛想の良いママさんや先客のお婆さんの気持ちを思うと、
とても店を出ることは出来なかった。
以前のように煙が我慢できたのである。