今年は小さな庭のトマトが豊作だった。
土地が狭いのでじか植えはせず、
大きなビニール袋に新しい土と肥料を入れて植えたけれど、
日ごとに苗は育ちトマト林のようになって、毎日真っ赤な実をつけた。
もちろん枝が盛りやすいように小さなうちから支柱を立てたし、
台風の前には紐を絡めたりして丁寧に補強してあげた。
去年の夏は雨ばかりだったからあまり実がならなかったけれど、
今年は雨が少なく面倒見が良かったせいか、
5本の苗から数えられないほどの実がなり、毎朝嬉しい悲鳴を上げた。
知人に配っても余るほどで、
そこで、熟した実をミキサーにかけて大雑把なトマトソースを作ってみた。
加えたのはニンニクと玉ねぎ、塩と酢。
トロトロになるまで煮詰めて味見をしたら、本格パスタ屋の味そのもの。
考えてみればパスタ屋以前に家庭からこうした食品が生み出されたのだから、
美味しいのは当たり前。
瓶に保存すると朱色がとても美しい。
瓶の中にトマトが凝縮されている。
私の夏の日々がこの瓶の中に詰まっているようだ。
時間はあっという間に過ぎていくけれど、
瓶の中のトマトとともに
しばらくはこの猛烈に暑かった夏の記憶を留めておくに違いない。