友人が熱いけどどこか散歩したいというのでラージヒルに誘った。
朝は何かと忙しく、約束したのは午後3時。
とても遅い出発だけど、いつもの場所だから心配はない。
今日も室温は33度近くになっている。
だから、外気温はもっと高く、太陽がじりじりと町に照りつけている。
それでも、森の中に入るといくらか涼しくなって、
人がいない静けさに包まれた緑の雰囲気が気持ちよい。
少し歩いたところでひとりの男性に会った。
その人がもう少し行った先にキツネノカミソリが咲いていると言った。
その花は近くの自然公園に斜面一面をオレンジ色に染めるほどあって、
有名な名所ともなっている。
キツネノカミソリはどこにでもある花だから大したことがないけれど、
その名所には多くの観光客が訪れる。
男性はそこも見て来たそうなのだが、
やけにここのがきれいだったと言った。
その人と別れてしばらくすると、
左手の斜面に花らしきものが見えた。
わずか数株がひっそりとした森の中で咲いている。
あたりを見回してもそこだけにしか咲いていない。
キツネノカミソリに違いないのに、その佇まいがとても美しかった。
斜面全面を彩るそれと違い、ここの花の美しいこと。
あの男性がわざわざ教えてくれた意味が分かった気がした。
たった一輪の花が大きな花束より美しいこともよくある。
まさにそんな感じの花との出会いだった。
その人も同じ感性だから、
こんな酷暑の日に私たちと同じようにここへ来たのだろう。