ご近所さんがびわを持ってきてくれた。
親せきの庭で採れたらしく、お裾分けだという。
プラケースには橙色の形の良い実がきちん並べられていた。
おそらくご近所さんはもらった中で、
見てくれの良い一級品だけ?を選んで持ってきてくれたに違いない。
びわはなかなか立派なものは少ないのでよく分かる。
これはこの時期だけの旬のもので、その旬もほんのわずかな期間で、
その上、実が傷つきやすいから当然売値が高くなる。
桃と同じように一度触ると痛んでしまい、
ある意味はかない存在の貴重な果物だ。
だから、立派な箱に大切そうに並べられて売っているから手が届かない。
子供の頃、びわの産地近くに住んでいて、
市場に売っているそれをおやつでよく食べていた。
そのせいかびわがお店に並べてあるとついじっくり眺めてしまう。
ほとんど買ったことはないのだけれど、
関東地方には庭のびわの木が実をつけているものも多く、
それらをこうして頂いたりするせいか毎年一回は食べている。
食後のデザートとして一度に5個ほど食べた。
小ぶりだけれどちゃんと琵琶そのものの味がする。
果実の汁が豊富な実だから食べやすく、つい何個も食べてしまう。
そうして卑しく口に入れていたら、
びわの硬い種がスルリと喉に滑り行ってしまった。
実は梅干しの種より大きく、硬いから消化されないに決まっている。
今頃、あの実は私の内部のどこら辺りを彷徨っているのだろうか。
いつの日か実が芽を出すかもしれない。
そんなあり得ないことを考えて不安になっている。