そこはロープウェイの駅前だった。
ロープウェイといえば山に登るための乗り物だと思っていたけれど、
どうやら箱根では重要な交通手段のようだ。
そこで大涌谷という活火山地を経由して芦ノ湖までたどる。
駅の中を進むと見晴らし台があり、足湯が備えてある。
せっかくだから靴下を脱ぎ絶景を眺めながら湯に浸かった。
箱根は日本では有数の観光地のようで、
平日にもかかわらず多くの客がいた。
こんな物見遊山的な観光はあまりしない私なので、
雪を被り青空に鎮座する富士山はもちろん、
まだ行ったことのない印象的な山容の金時山に強く心ひかれた。
大涌谷はロープウェイの中から見下ろすと、
沸き起こる噴煙の様子が圧巻だった。
ロープウェイはそこで芦ノ湖湖畔に降りるため乗換となる。
大涌谷には広い駐車場があり、大型バスが軒並みひしめいていた。
地理が分からない私はここに車道があるのに驚いた。
強風でロープウェイが止まったとしても移動することができるのだ。
全く無知な私は、心の中でいざという時の心配ばかりしていた。
箱根山が入山禁止だしロープウェイも臨時休業しているので、
湖の西岸を歩くことになった。
キャンプ場を経て箱根駅伝折り返し地点まで歩く。
登山と比べたら約10キロの平地道など大したことはない。
四時間ほどで歩ききるだろう。
出発したのは12時頃で湖の水量を調整する湖尻水門を過ぎ、
次の深良水門を経た辺りで、
小田原駅で買ってきた鯵の押し寿司を広げた。
風もなく寒くもなく空は雨の心配が微塵もなかった。
旅ではこの天気こそが一番の憂慮事項で雨になったら最悪だ。
私の山仲間は朝から雨が降っても登山を実行するけれど、
私は前日の天気予報で出欠を決めるほど雨が嫌だ。
湖から離れ、重たい足を引きづって箱根駅伝ミュージアムに到着すると、
事前に調べてあったバス路線が、
宿泊地のバス停には行かないので困ってしまった。
バス路線を二つ乗り大回りすれば行くことができるけれど、
暗くなってから宿に着くのは嫌なので、
私の強い希望でタクシーを呼ぶことになる。
今回の旅は公共交通網を使って旅することの難しさをしみじみ感じてしまった。