夕方少し冷えてきたから今季初めて薪ストーブに火を入れた。
山の中にあるこの家は平地のそれよりも冷えるから、
晴れた日の翌朝は放射冷却で一層寒くなる。
だけど、夜の熾火はそんな朝でも柔らかなぬくもりを残してくれる。
夏の間に剪定してとっておいた庭の木々の枯葉や枝の下に、
ほんの少し杉の葉を火種にして入れるだけで、
ストーブのガラス窓の中は激しく波打つ炎で真っ赤に染められる。
その炎の揺らめく様子はずっと眺めていても飽きないほどだ。
何よりこの赤い色こそが人間のエネルギーの源に感じる。
人間の起源すら想像してしまう。
最近の人々はこの炎を見るためにわざわざ遠くのキャンプ地まで行く。
昔なら土間があって人々は常時、この炎と向き合っていた。
残念ながら文明が進むにつれて便利さと安全のため、
直火は人々の暮らしから遠ざけられ、
今やキャンプ場でしか見られないという不思議な時代になった。
はぜる火を見ているととても心が落ち着く。
それはきっと私たちの祖先から受け継がれてきた何かが、
あるべきところに収まっているからかもしれない。
この山間にある家に来るのは月に1,2度程度だが、
冬になるとこの炎を見つめることができるのが嬉しい。