道を探していたら狭い行き止まりに入ってしまったので、
車を降りてたまたまそこにいた男性に道を尋ねた。
その人は道の説明をすると、
私が車をバックするのを後ろで声をかけ乍ら誘導してくれた。
ハンドル操作を間違えると、
水路に落ちそうな場所だったのでとても助かった。
その辺りには長い竹や切り落としたらしい竹が山積みになっていて、
彼はここで竹を使った何かの工事をしているようだった。
ちょうどアジアのどこかの国で、
若い男女が竹で複雑な建物を作っている動画を見て、
竹の可能性にひどく感心したばかりだった私は、
車を止めたついでに好奇心から作業現場を見せてもらうことにした。
そこは、東京の隅っこの田舎町で家々よりも山が多いところだ。
山の入り口の階段を10段ほど上ると森に囲まれた広場があって、
そこに大きな足場のようなものが複雑に作られていた。
てっきり地域の祭りが大々的に行われるのだと思ったら、
彼の説明によるとどうやらお芝居のためのものらしい。
見上げるほどに高い竹の足場はその舞台なのだった。
長い竹はパイプの足場のように組まれ、それらは針金で繋がれている。
青々とした竹は奇特家らしいここの山の持ち主から提供されたという。
彼等はあちこちを巡る劇団で今回はここが舞台で、
3か月もかかって準備を続けてきたと言った。
それにしても竹で組まれた舞台はとても迫力がある。
頂いたチラシには興味深い文学的出し物が印刷されてある。
森の中で松明の灯りのもとに行われるお芝居、
竹で組まれた舞台といい、芝居の題目といい、心惹かれる。
こんなふうに自然と一体化した舞台は、
お芝居が生まれた太古の昔を想い起こさせる。
その頃の建築資材としたら竹は身近なものだったろう。
終わった後は燃料にもなるし、何より自然に帰る。
公演期間中は天気に恵まれ、
多くの観客が来てくれば良いなあと心から思った。