金魚やメダカのために自然の水を沢に貰いに行くのだが、
夏になってあまりにも暑いので外出が億劫になって、
もっぱら水道水を利用している。
水道水にはカルキ、つまり、塩素が入っているので、
三日間ほど屋外で日に当ててカルキ抜きをしなければならない。
塩素はたとえ微量でも自然の小魚には毒なのだ。
ところが、ペットボトルにカナブンのような昆虫が浮いていた。
死んではおらず、足をしきりに動かしている。
「助けて」と全身で主張しているのに、
虫は苦手なので見て見ぬふりを続けた。
ペットボトルに浮くその昆虫は10日ほど足を動かしていた。
動きが止まったのを確かめてから虫をそっと流し落とし、
金魚の水槽にその水を入れた。
それにしてもこの昆虫の生命力には驚いた。
水面に浮いたまま10日ほどだ。
人間だったら1時間も持たないのに。
でも、どうして助け上げなかったのだろう。
害虫だったかもしれないけれど、それなら一気に殺せばよいのに。
「やれ打つな ハエが手をする 足をする」の一茶とは大違い。
無慈悲な私だ。
人は息をするだけで相当数の生物を犠牲にしている。
一生の間の殺生は数えることができないほど夥しい。
だから、ヒトは死ぬ時、どんな善人でさえも苦しむのだろう。
覚悟しなければならない。